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白薔薇と黒薔薇の箱庭

気ままに更新。 気が向いたら自作の物を更新。 北の国の学生さんが送る日常日記。

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温かい手はもう、どこにもない




~センチメンタル~



切ないね  
楽しかった日々は夢のよう

苦しいね  
分かり合うことを忘れた僕等


知ってるよ
君が限界なこと
わかってるよ
僕がギリギリなこと


秋風吹く木漏れ日の今日
ひっそりとした公園は
鳥の声さえ聞こえない

隣で君が泣いている
でも慰めることができない僕は
知らないふりで座っている


真上にあった日が西にいったころ
君は一言僕にくれて立ち上がった


「ありがとう さようなら」


走り去る靴音
なびくマフラーは
角に消えた


とっさに伸ばした手は
何も掴まずに
拳を握って震えてる

「待って」

言いかけたそれを
喉で止めた

振り払った手を
もう一度つかむ権利は
僕にないのだから





こんな思いをするぐらいなら
初めから恋なんかするんじゃなかった


失うぐらいならいっそ
君の存在を僕から無くしたい


いつのまにか僕は
君の笑顔に生かされていた



なくして気づいた

手に入らなくなって気づいた


苦しいと思うほど
君が大切だと思っていたこと

生きれないと思うほど
君を必要としていたこと

とても僕が君を
好きだったこと



地平線に沈んだ日
街灯に照らされた公園には
僕の咽び泣く声がよく響いた



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薔薇の花言葉シリーズ 3.5~黒~

気づいていた

いずれこんな日が来ることを



エゴに沈んで


彼に病になったと、
不治の病だと、
そう告げたときの彼の瞳は
捨てられた子どものように
危なく
そして
脆く弱々しく見えた。

そのときは
あまりにも
いつもの彼とは
違いすぎて、
気のせいだと
そう、思うことにした。


ただ今になって
あの時なにかおこしていたら
こんなにも
彼が壊れることは
なかったのかもしれない。
そう、思う。



ピンと張りつめた弦が切れるように、
それは前触れもなく起きた。


部屋を出ていた彼が戻ってきた。
暗く影を落とした瞳、
手の中には銀のナイフ。

私は悟った。
己の終わりを。



彼はすぐ側まできた。
そして口を開いた。

「僕のものなのに、
勝手にきえないで。」

ただ一言。

それはまるで
小さな子どもの
我が侭のよう。
いや、
彼は
幼い子どもそのもの。

ただ違うことは
寂しさと不安を
大人の理性で、
繋いでいること。

彼の心は
ゆらゆら揺れるジェンガのように
危なくて
縄の吊り橋より
崩れやすかった。



キラリとナイフが光った。

鮮血が空を舞う。



あら、
ずいぶんとまあ
泣きそうな顔。


薄れていく世界の中、
私は

やすらかに

優しく

悲しげに

笑った。


最後に見たのは
白い床を染めていく朱に、
銀ナイフを持って
涙を流す彼の顔。



そう、これは
彼のエゴ。
だけど
私はそんな我が侭にすら
命をかける。

それが
アイデンティティ。

それが私の
クレイジーで
ホットな
アイデンティティ。




薔薇の花言葉シリーズ third~黒~

キラリと光る銀のナイフに滴るのは

君の血か

僕の涙か


エゴに溺れて


赤い水溜まり

中心には少女がいる。
否、
少女だったものがある。

そして僕の手には、
銀色に光るナイフ。



そう

僕は

恋人である少女を

この手で 殺した。



病弱だった彼女。
華奢な体は病によってさらに細くなり、
肌も真っ白になった。
痩せこけていく彼女。
タイムリミットは目前。

会うたびに錯覚した。
このまま消えてしまうのではないかと。

彼女を失うのが怖かった。
嫌だった。

だから

「病」に彼女をとられる前に、
彼女の時を僕の手で
止めようと思ったんだ。





また一粒
滴が
銀ナイフの先から
滴る。


彼女の時は止まった。
これで彼女は僕のもの。
失うことはない。

嬉しいはずなのに
なぜだか
心はカラッポだ。


また一粒
滴が
銀ナイフの先から
滴る。
それは
透明な
滴だった。



END

やたらとせっぱ詰まった状況

羊の皮を被った狼is lovesick

I want word for me.
I hope you love me.
I want to see your heart.
(僕のための言葉が欲しい。
僕は君に愛して欲しい。
僕は君の心が見たい。)

あぁ どうしよう!
君のコトを考えていたらこんなにも、
たくさんのコトが欲しくなっちゃう。
I'm sorry!
(ゴメンね!)
先に謝っておくよ。
僕は我が侭だから、きっと君の全部が欲しくなる。
If you say NO!,I absorb all.
(もし君がダメ!って言っても僕はすべて奪うケドね。)


あぁ!どうしよう!!
君がいるじゃないか!
Is this destiny?
(これも運命なのかい?)
君も僕に気がついて手を振ってくれた。
Can I close to you?
Can I hope talk with you?
(君の隣に行っていい?
君とお話したいって望んでいい?)


あぁ!!どうしよう!!
Because you are very lovely,I want to eat you!
(きみがとっても愛らしいから食べちゃいたいよ!!)


薔薇の花言葉シリーズ second~黄~

マヌケなお前


なぁ、その花の花言葉、
ちゃんとわかって渡しているんだろうな?




黄色い花のブーケ



何気なく教室の窓から下を見ていると、校門のほうから校舎へ走ってくる人影を見つけた。時計の針はもう少しで30分を示すところだ。見慣れた人影もまた時計を見て顔を真っ青にしている。


「(しいなの奴、だいぶ焦ってるな。)」

スピードを上げて走る人影・・しいなは、この話の主人公であり高みの見物をしているユノのクラスメイトだ。
中学1年の春にクラスが一緒になってからずっと同じクラスで、今年の春、めでたく高校までもが一緒になり、さらにクラスも一緒になったいわば腐れ縁だ。
そしてそこまでクラスが一緒になればおのずと話す機会もできるわけで、友達以上親友未満が二人の状態でもある。



「(あ~あ~急いじゃって周りが見えてないよ。そんなに急ぐと・・・・・・あ、こけた)。」



ズザァァと真正面から倒れたしいな。
(今時のマンガでもそんなおきまりのこけ方はしないよ。)とユノはあきれつつも心配そうにしいなを見つめた。むくりと起きあがった彼女はまた走り出したが残念なことにチャイムが鳴った。生徒指導室行き決定となったしいなを視界の端に入れつつ教壇にのぼった担任の話にユノは耳をかたむけることにした。



昼休みの時間、ユノはしいながいるだろう屋上に足を運んだ。重たい扉を開けたら風が吹き抜けてユノの髪をさらった。明るく照らされたそこにはグテ~~っとしたしいながいた。


「説教地獄からお帰り、おマヌケしいな。」

「今日はたまたまだもん。」

「そのたまたまだもんって言葉はもう5回目なんだけどな。」

「・・・朝なんか嫌いだ。」

「しいなは低血圧だからな。」


くくっと喉を鳴らして笑うと不機嫌な猫のような目が俺を見た。頬をふくらませて口先をとがらせるしいな。おいおい、その顔は反則だろうが。ハァと息を吐いて、不機嫌なこの猫の頭をなでてやった。



「悪かったよ。ほら、弁当のおかずを分けてやるから機嫌直せ。」



弁当をちらつかせるとしいなの目が輝いた。(単純な奴・・。)だけどその単純な奴に惚れた俺も単純なのかもしれない。(認めたくないけどな。)
もぐもぐと俺の弁当のおかずを食っていくしいなはふと思い出したように俺を見た。



「今日ってさ。」

「(なんだ?)」

「ユノの誕生日だよね。」

「あ~・・そんな気もするな。」

「なっ!!自分の誕生日にその台詞!?だめだよ、ちゃんとお祝いしなきゃ!!」

「つっても俺の両親はただいまアメリカで動物を追いかけてますが。」

「しいながプレゼントを持ってユノの家に押しかけるから!!」

「しいながプレゼント?・・変なもん持ってくるなよ。」

「ひどっ!!」

「ひどくねぇ!俺の中2の誕生日にダイナマイトを送りつけてきたのはどこのどいつだと思ってやがる。」




俺の言葉にしいなが「うっ」と詰まらせた。そう、記憶にまだ新しい中2の誕生日、しいなは俺の家にこれでもかと言うほどダイナマイトを送りつけてきた。段ボール一杯に詰められたダイナマイト。使い道など全くなく、仕方ないのでアメリカで動物たち(猛獣)を追いかけている両親に送った。しいなのプレゼントでマシなものはなく(俺限定)去年は日本刀だった。(危うく銃刀法違反で少年院行きになるところだった!!)


「今回は普通のものだもん!!」

「どうだかな。」

「(カチン)絶対喜ばせてやる!!」

「が~んば~って~。」


ヒラヒラと片手を振るとバタンと音を立てて扉が閉まった。
そしておかずが全くなくなった弁当に手をつけた。









ピンぽーん

『・・・。』

「(むかっ)。」

ピンぽーん  ピンぽーん

『・・・。』

「(イラッ)。」

ピンぽんピンぽんピンぽんピンぽんピンぽんピンぽんピンぽんピンぽんピンぽんp『だぁぁああ!!わかった!!今開けるから連打するんじゃねぇ!!』

「(・・勝った!)」


ガチャっとドアノブが回り扉が開いた。ドアの隙間からひっじょーにびみょーな顔をしたユノが見える。

「マジで来たのかよ(嬉しいけどピンぽん連打しやがって)。」

「有言実行が目標ですから(連打されたくなかったらとっととでやがれ)。」

「ま~なんだせっかく来たんだしあがっていくか?」

「いいよ。プレゼント持ってきただけだし。」

ハイっと渡されたのは

「は・・・な?」

「そうだよ、まともでしょ?」

「そりゃ、まともだけど・・。」

渡されたのはブーケ。別に花は嫌いじゃない。さらに花の色は俺の好きな黄色。なおさら文句なしだ。・・・だけど、こいつはこの花の意味を知っているのだろうか。黄色い薔薇の花言葉を。
・・・。絶対知らないだろうな。どうせ「ユノは黄色が好きだから黄色のお花にしてみましたぁ~。」とかなんとか言うんだろうな。

「なぁ、この花を選んだ理由って・・。」

「ユノは黄色が好きだから黄色のお花にしてみましたぁ~。」

「(やっぱり。)」







「って言うと思った?」





しいなの言葉にしいなを見た。
おちゃらけた目ではない

女友達でもない


「女の子」の目をしたしいながいた。


「し、いな?」

「そのブーケの意味、『友情』じゃないから。」

「ちょっ、それって!!」

「じゃあね!!バイバイ!」

「おい・・!!しいな!!」



走り去るしいなはだんだん小さくなっていった。
だけど走り去る時に見えたしいなの耳は真っ赤だった。


『そのブーケの意味、『友情』じゃないから。』


さっきのしいなの台詞が頭の中で木霊する。

「っっっあああ~~!!なんなんだよ~。」



黄色いバラ

その花言葉は





「あなたに恋してます」





「可愛い顔してやることが大胆だぞ~。」
意味がわかったユノもまた扉の前で赤くなった顔を冷ましていた。





友達以上親友未満の二人の関係が変わるのは
もう少し先のお話・・・・。






fin







薔薇の花言葉シリーズ first ~青~

降りそそぐ花びらは私からあなたへのプレゼント

惜しみなく舞い散る花びらは 
あなたに    いえ、あなた達に

とても似合ってる



その花は私を語っているようだ



鳴り響く鐘の音は二人を祝福するように。
色とりどりの花のシャワーと人々の笑顔。
幸せすぎる空間。
暖かなその世界にとけ込めない私は少し離れた場所から二人を見ていた。


大切な幼なじみとあの子が今、腕を組んで階段を下りていく。
二人は本当に幸せそう。
幼なじみのあいつは少し照れくさそうで、あの子ははにかむように笑っていて・・至福の時を過ごしているのがみるだけでわかる。


なんだか、妬けてしまうな。


ぽつりと生まれた感情に苦笑しながらも、ついつい思ってしまう。



「もしかしたら今、あいつの隣にいたのは自分だったかもしれない」と。


こんなにわかりきった現実を見ても、どこかでまだあいつへの思いは断ち切れていなくて、あの子へのライバル心も消えてはいなくて・・、ホント未練たらしい女だと自分を笑った。


二人を認めたくて、思いを断ち切りたくてここに来たはずなのにいったい自分は何をしているのだろう。
前を向けば二人と目があった。
二人は少し目を見開いたけどにっこりと笑った。

無表情な私




だけど





ゆっくり





口端をあげて






笑い返した





二人はまた嬉しそうに笑って、歩みを再開した。

心の中がじんわりとあたたかくなる。
ひろがる温度は冷たい私を溶かして、暖かな世界へ誘い込んだ。


未練というか後悔というか、そういう後ろめたい気持ちも少なからずあるけれど、今はただ二人のために花を降らせたかった。
受付で渡された籠に入っていた花ではなく、白い花びらを二人に降らせた。

赤やピンクに混じって白い花びらが二人のもとへ舞っていく。
純粋な色はまるで二人のよう。



真っ白な二人

踏み込めないその色




あなたの隣にあることは

永遠の夢となった



去りゆく二人に満足する今の私には

青いバラがよく似合う

そう思った








超短い・・かな?

午後の昼下がり
今時のカフェ
向かい合わせの席


テーブルに置かれた紅茶はまだ熱い


「志保。」

「ん?」

「好きだよ。」

朝も志保に届けた言葉をもう一度届ける。
志保の顔は赤いリンゴみたいになった。
ホント、初々しいよね。

「何言ってるの・・。」

「だって

毎日言わないと



気が休まらないもの
。」

(ほてった志保の顔は紅茶よりも熱そうだ・・)

うつつが夢で、夢がうつつならばよかったのに


フィオーレと優しく呼ぶ貴女は輝いていた。



鈍色の月夜







ふわふわと浮いているような心地よい感覚。
決して突き刺すような風はなく、ゆるやかに包むような風が温かく吹いている。
空を飛んでいるわけでも、海を漂っているわけでもない世界。
流れるままに身を任せ、心地よさに酔っていれば、聞こえてきた声。
それは私を呼ぶ貴女の声。

フィオーレ

そう呼ぶ貴女もふわふわと浮いていて、白くゆったりとしたワンピースの裾がふわりふわりとなびいている。
桃色とも黄色とも水色とも黄緑色とも言えぬパステルな色が幾重にも重なっている世界に私と貴女が浮いている。

二人だけの空間
二人だけの世界
なんと幸福なのだろう
なんと輝かしいのだろう

貴女は私に手をさしのべ、私は貴女の手をとった。
二人の手が触れ合ったとき、天は二人を祝福し、空へ誘う。
あふれる光が私と貴女の上から降りそそぐ。
それはまるで一つの道のようであり、私と貴女は手を握りしめ昇りゆく。
空は二人のために天空の扉を開く。
神々しくも麗しい景色が扉の奥に見える。
あまりの美しさに足が止まり貴女を見れば、微笑むだけ。
しかし、手をもっと強く握り貴女は数歩だけ上へ進み私をふり返る。

フィオーレ

優しく甘く私の名が響く。
貴女は手を引っ張ることもせず微笑む。
名だけを甘く呼ぶ。
フィオーレと。

神々しさに止まっていた足は軽くなっていた。
麗しき世界へ・・・。
二人して光の彼方に逃れよう。
今一度、足を踏み出せば麗しき世界からまばゆい光が放たれた。






まばゆい光を抜けたと思った先は暗い夜の世界。
パステル色の世界は鈍色に変わり、
温かい光の道は月明かりに照らされた白いシーツになり、
天空の扉はがあったそこには薄汚れた天井がひろがっていた。

なんということ
なんと悲しき目覚め

パステルの世界は私の幸福の夢。
甘く私を呼ぶ貴女は熱き私の思いが燃え上がった幻影。

なんということ
あぁ夜、あの夢を返しておくれ
あぁ、あの人の幻影を返しておくれ

今一度、あの人を見せておくれ
うつつで見れぬあの人を今一度夢で見せておくれ



天に仰ぎ、両手を伸ばしてもなんの一つも変わらず、私の青い瞳から滴だけがこぼれていく。
空のてっぺんに月が昇りきったころ、哀れな男の家からは嗚咽だけが漏れていた。







おそら 兄妹愛編

おそらがみたいな

おそらがみたいな





ツンとくる薬品の臭いは真っ白なこの部屋にはよく似合う。
壁も床もベッドも白い部屋の住人もまた白い。
あらゆる色が使われている俺はなんだか異世界のようにも感じた。

「万里。」
「お兄ちゃん。」

名前を呼べば花のような笑顔でふりかえる俺の妹。
いつまでも変わらない笑顔にも日増しに青白さが出ていた。

「学校はどうだった?楽しかった?」
「楽しかったよ。今日は何の話を聞きたい?」
「そうだなー・・・。」

学校はどうだった?・・それが妹の最初に言う言葉。
万里がここに来たのは小学校に上がってすぐのことだったから、
学校がどんな場所とか何をしたりするとかしらない。
そして友達もいない。
だから俺に聞く。
健康体で学校に行っていてもう8年もそんなことをしてきた俺に。

「来週は体育大会があるんだよ。」
「何をするの?」
「みんなで走って競争したりするよ。」
「楽しそう。」
「ものすごく疲れるけどね。」

いいなぁとつぶやく万里。
でも病弱な万里の体では激しい運動はできない。
なによりも白くて細すぎるこの四肢がそれを証明している。

「万里も学校に行けるかな。」
「行けるさ。」

「行ける」だなんて酷い嘘だ。
万里の寿命はもう長くない。
今年一年持つか持たないかだと医者が言っていた。
そしてその寿命もここで終わることは決まっているのだろう。
きっと死ぬまで万里はここから出られない。
でも嘘でもなんでもいいから希望に満ちた言葉を俺は万里に投げかける。
知っているからこそ、絶望に満ちた心で死なせたくないから。

「ねぇお兄ちゃん。」
「なんだ?」
「万里ね、屋上に行きたい。」
「だけどお医者さんはダメだって言っただろ。」

優しくなだめようと万里の頭に手をのばしたとき、
万里と視線がぶつかった。
憂いの水に渦巻く瞳と。

「・・わかった。でもちゃんと毛布を羽織っていくからな。」
「ありがとう。」

毛布を取りに行くと部屋を出た俺の中には万里の瞳が思い出されていた。
何も知らないと思っていた妹。
でもあの目はわかっている目だった。

人は己の死期を悟る生き物だという。
ならば万里も悟ったのだろうか。
だから屋上に行きたいと言ったのだろうか。

毛布を手にして部屋に戻った俺は毛布を渡して、車いすのグリップを握って階段へ向かった。
ただ一言もしゃべらない。

屋上についてぐるりと空を見渡して万里はやっと口を開いた。

「わたし あとどのくらい生きられるの?」
「なにを」
「知ってるよ、もう長くは生きられないこと。
だから精一杯生きたいの。」
「・・・・。
・・・・・・・来年の桜は見られないだろうって。」
「・・そっか。」

ふるふると万里の小さな背中が震えている。
俺からは背中しか見えないけど、きっと泣いているのだろう。

「万里、あ「わたしね、次に生まれてくるときはこの空の下で走れる体で生まれたい。」

青だった空は赤く染まってきた。

「わたしもお兄ちゃんみたいに走れる体になれるかな?」
「・・・ああ、なれるよ。絶対に。」
「そうだよね。」

振り向いた万里の顔は夕日で赤く色づいて、
元気に笑う女の子たちとなにもかわらない笑顔になった。
病弱なシンデレラにかけられた日が沈むまでの魔法だった。




あれから1年。
医者の予告通り万里は冬のある日に病院で倒れ、帰らぬ人となった。


「万里、空の上はどうだ。」

桜を見つめていたとき高くて可愛らしい声が聞こえた。
その声の主は俺の横を通り過ぎ元気に走っていった。
可愛らしい声を見送った後、フッと笑って俺は歩き出す。

「どうやらお前はもう下に降りてきたようだな・・・。」



願わくば、あの子の幸せを・・・・・



アディオス ミ・アミーゴ!!

俺は

お前と出会えて
お前と生きれて

よかった



BAD ENDな俺達





「っ・・弘人。」
「今まで楽しかったぜ、夏木。」

敵に操られてしまった弘人の体。
術者は殺したのに解けないそれ。

「弘人・・意識が戻ったのか!?」
「意識だけな。体は言うことをきかねぇ・・。」
「そんな・・。」

術者が死ねば自殺するようにかけられた暗示。
弘人が頭に当てた銃口が震えていた。

「・・すまねぇ、お前等に怪我させてさ。」
「弘人・・!!」

悲痛な叫び声
固く自分の銃を握った

一筋 弘人が涙を流した

ゆっくり弘人の指が引き金を引く

「アディオス エテルナメンテ・・・。」

ズガァン










町を見渡せる小高い丘の上で一つの墓石に触れた。
冷たい石に刻まれた文字はかつて共に戦い生きた男の名前。

「よぅ、相棒。」

なじみ深い呼称で呼んでも聞こえてくるのは風の音だけ。
あいつの声なんか聞こえてこない。
でも、いつもいつもこうやって、ここに来るたびに呼んでみる。
『なんだよ、夏木。』 そう返ってくるような気がするから。

「頭ン中じゃ、弘人の声が聞こえてくんだけどな・・。」

この世界では何も聞こえないことに苦笑しつつ、持ってきた花を墓に添えて墓石の真正面に座った。



あの日から3年たった。
今でも俺は殺し屋として生きている。
だけど、朝起きたとき、仕事をしてるとき、家に帰ったとき、飯食ってるとき・・いつも弘人の声が聞こえてきたのに、
その不器用だけど優しい声は響かない。
「夏木」と笑いかけるあいつがいない。
その事実が俺の心を空っぽにする。

葬儀の日、同業者で仲のよかった奴らの他に、情報屋としてよく会った雅彦や工藤、たまに組んだ俊、一輝、いろいろな奴が来てたくさんの人が泣いていた。
感情を殺してなきゃいけない世界の奴らがみんなして泣いた。
なぁ、チームメイトが死んでも泣かなかった弥彦と一輝も涙を流していたんだぜ。雅彦は大泣きだったな。俊は淋しそうに遺影を見つめていた。

弘人、あの後 俺はお前が言った言葉の意味を調べたんだ。

「永遠にさよなら」

全くお前らしい別れの挨拶だ

だから俺も

「アディオス エテルナメンテ。」








永遠にさよならだなんて不器用だけど優しい言葉じゃないか

(つまりは死んだ後は気にすせず生きろってことだろ)

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HN:
綺羅
性別:
女性
職業:
学生さん
趣味:
菓子制作
自己紹介:
 好きなものは自由
  欲しいものは心
   吐き出したいのは愛情

 夢見がちに生きてて
 リアルとファンタジーの狭間に住む女ですよ

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