白薔薇と黒薔薇の箱庭
気ままに更新。 気が向いたら自作の物を更新。 北の国の学生さんが送る日常日記。
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おそら 兄妹愛編
おそらがみたいな
おそらがみたいな
ツンとくる薬品の臭いは真っ白なこの部屋にはよく似合う。
壁も床もベッドも白い部屋の住人もまた白い。
あらゆる色が使われている俺はなんだか異世界のようにも感じた。
「万里。」
「お兄ちゃん。」
名前を呼べば花のような笑顔でふりかえる俺の妹。
いつまでも変わらない笑顔にも日増しに青白さが出ていた。
「学校はどうだった?楽しかった?」
「楽しかったよ。今日は何の話を聞きたい?」
「そうだなー・・・。」
学校はどうだった?・・それが妹の最初に言う言葉。
万里がここに来たのは小学校に上がってすぐのことだったから、
学校がどんな場所とか何をしたりするとかしらない。
そして友達もいない。
だから俺に聞く。
健康体で学校に行っていてもう8年もそんなことをしてきた俺に。
「来週は体育大会があるんだよ。」
「何をするの?」
「みんなで走って競争したりするよ。」
「楽しそう。」
「ものすごく疲れるけどね。」
いいなぁとつぶやく万里。
でも病弱な万里の体では激しい運動はできない。
なによりも白くて細すぎるこの四肢がそれを証明している。
「万里も学校に行けるかな。」
「行けるさ。」
「行ける」だなんて酷い嘘だ。
万里の寿命はもう長くない。
今年一年持つか持たないかだと医者が言っていた。
そしてその寿命もここで終わることは決まっているのだろう。
きっと死ぬまで万里はここから出られない。
でも嘘でもなんでもいいから希望に満ちた言葉を俺は万里に投げかける。
知っているからこそ、絶望に満ちた心で死なせたくないから。
「ねぇお兄ちゃん。」
「なんだ?」
「万里ね、屋上に行きたい。」
「だけどお医者さんはダメだって言っただろ。」
優しくなだめようと万里の頭に手をのばしたとき、
万里と視線がぶつかった。
憂いの水に渦巻く瞳と。
「・・わかった。でもちゃんと毛布を羽織っていくからな。」
「ありがとう。」
毛布を取りに行くと部屋を出た俺の中には万里の瞳が思い出されていた。
何も知らないと思っていた妹。
でもあの目はわかっている目だった。
人は己の死期を悟る生き物だという。
ならば万里も悟ったのだろうか。
だから屋上に行きたいと言ったのだろうか。
毛布を手にして部屋に戻った俺は毛布を渡して、車いすのグリップを握って階段へ向かった。
ただ一言もしゃべらない。
屋上についてぐるりと空を見渡して万里はやっと口を開いた。
「わたし あとどのくらい生きられるの?」
「なにを」
「知ってるよ、もう長くは生きられないこと。
だから精一杯生きたいの。」
「・・・・。
・・・・・・・来年の桜は見られないだろうって。」
「・・そっか。」
ふるふると万里の小さな背中が震えている。
俺からは背中しか見えないけど、きっと泣いているのだろう。
「万里、あ「わたしね、次に生まれてくるときはこの空の下で走れる体で生まれたい。」
青だった空は赤く染まってきた。
「わたしもお兄ちゃんみたいに走れる体になれるかな?」
「・・・ああ、なれるよ。絶対に。」
「そうだよね。」
振り向いた万里の顔は夕日で赤く色づいて、
元気に笑う女の子たちとなにもかわらない笑顔になった。
病弱なシンデレラにかけられた日が沈むまでの魔法だった。
あれから1年。
医者の予告通り万里は冬のある日に病院で倒れ、帰らぬ人となった。
「万里、空の上はどうだ。」
桜を見つめていたとき高くて可愛らしい声が聞こえた。
その声の主は俺の横を通り過ぎ元気に走っていった。
可愛らしい声を見送った後、フッと笑って俺は歩き出す。
「どうやらお前はもう下に降りてきたようだな・・・。」
願わくば、あの子の幸せを・・・・・
おそらがみたいな
ツンとくる薬品の臭いは真っ白なこの部屋にはよく似合う。
壁も床もベッドも白い部屋の住人もまた白い。
あらゆる色が使われている俺はなんだか異世界のようにも感じた。
「万里。」
「お兄ちゃん。」
名前を呼べば花のような笑顔でふりかえる俺の妹。
いつまでも変わらない笑顔にも日増しに青白さが出ていた。
「学校はどうだった?楽しかった?」
「楽しかったよ。今日は何の話を聞きたい?」
「そうだなー・・・。」
学校はどうだった?・・それが妹の最初に言う言葉。
万里がここに来たのは小学校に上がってすぐのことだったから、
学校がどんな場所とか何をしたりするとかしらない。
そして友達もいない。
だから俺に聞く。
健康体で学校に行っていてもう8年もそんなことをしてきた俺に。
「来週は体育大会があるんだよ。」
「何をするの?」
「みんなで走って競争したりするよ。」
「楽しそう。」
「ものすごく疲れるけどね。」
いいなぁとつぶやく万里。
でも病弱な万里の体では激しい運動はできない。
なによりも白くて細すぎるこの四肢がそれを証明している。
「万里も学校に行けるかな。」
「行けるさ。」
「行ける」だなんて酷い嘘だ。
万里の寿命はもう長くない。
今年一年持つか持たないかだと医者が言っていた。
そしてその寿命もここで終わることは決まっているのだろう。
きっと死ぬまで万里はここから出られない。
でも嘘でもなんでもいいから希望に満ちた言葉を俺は万里に投げかける。
知っているからこそ、絶望に満ちた心で死なせたくないから。
「ねぇお兄ちゃん。」
「なんだ?」
「万里ね、屋上に行きたい。」
「だけどお医者さんはダメだって言っただろ。」
優しくなだめようと万里の頭に手をのばしたとき、
万里と視線がぶつかった。
憂いの水に渦巻く瞳と。
「・・わかった。でもちゃんと毛布を羽織っていくからな。」
「ありがとう。」
毛布を取りに行くと部屋を出た俺の中には万里の瞳が思い出されていた。
何も知らないと思っていた妹。
でもあの目はわかっている目だった。
人は己の死期を悟る生き物だという。
ならば万里も悟ったのだろうか。
だから屋上に行きたいと言ったのだろうか。
毛布を手にして部屋に戻った俺は毛布を渡して、車いすのグリップを握って階段へ向かった。
ただ一言もしゃべらない。
屋上についてぐるりと空を見渡して万里はやっと口を開いた。
「わたし あとどのくらい生きられるの?」
「なにを」
「知ってるよ、もう長くは生きられないこと。
だから精一杯生きたいの。」
「・・・・。
・・・・・・・来年の桜は見られないだろうって。」
「・・そっか。」
ふるふると万里の小さな背中が震えている。
俺からは背中しか見えないけど、きっと泣いているのだろう。
「万里、あ「わたしね、次に生まれてくるときはこの空の下で走れる体で生まれたい。」
青だった空は赤く染まってきた。
「わたしもお兄ちゃんみたいに走れる体になれるかな?」
「・・・ああ、なれるよ。絶対に。」
「そうだよね。」
振り向いた万里の顔は夕日で赤く色づいて、
元気に笑う女の子たちとなにもかわらない笑顔になった。
病弱なシンデレラにかけられた日が沈むまでの魔法だった。
あれから1年。
医者の予告通り万里は冬のある日に病院で倒れ、帰らぬ人となった。
「万里、空の上はどうだ。」
桜を見つめていたとき高くて可愛らしい声が聞こえた。
その声の主は俺の横を通り過ぎ元気に走っていった。
可愛らしい声を見送った後、フッと笑って俺は歩き出す。
「どうやらお前はもう下に降りてきたようだな・・・。」
願わくば、あの子の幸せを・・・・・
テスト明けて書いたのが死ネタ。
思考回路がすさんでる証拠だなぁ・・・。
ちなみにこれを書いていたとき
PCでは東京事変を流していたけど、
脳内では「つばさがほしい」(←童謡)が流れていた。
しかも「この大空につばさを広げ~とんで~ゆきた~い~よ~」
の部分だけをリピート再生。(そこしかわからないから)
以上、雨が降ってて暗くなってる綺羅でした。
※反転文章有り
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