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白薔薇と黒薔薇の箱庭

気ままに更新。 気が向いたら自作の物を更新。 北の国の学生さんが送る日常日記。

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うつつが夢で、夢がうつつならばよかったのに


フィオーレと優しく呼ぶ貴女は輝いていた。



鈍色の月夜







ふわふわと浮いているような心地よい感覚。
決して突き刺すような風はなく、ゆるやかに包むような風が温かく吹いている。
空を飛んでいるわけでも、海を漂っているわけでもない世界。
流れるままに身を任せ、心地よさに酔っていれば、聞こえてきた声。
それは私を呼ぶ貴女の声。

フィオーレ

そう呼ぶ貴女もふわふわと浮いていて、白くゆったりとしたワンピースの裾がふわりふわりとなびいている。
桃色とも黄色とも水色とも黄緑色とも言えぬパステルな色が幾重にも重なっている世界に私と貴女が浮いている。

二人だけの空間
二人だけの世界
なんと幸福なのだろう
なんと輝かしいのだろう

貴女は私に手をさしのべ、私は貴女の手をとった。
二人の手が触れ合ったとき、天は二人を祝福し、空へ誘う。
あふれる光が私と貴女の上から降りそそぐ。
それはまるで一つの道のようであり、私と貴女は手を握りしめ昇りゆく。
空は二人のために天空の扉を開く。
神々しくも麗しい景色が扉の奥に見える。
あまりの美しさに足が止まり貴女を見れば、微笑むだけ。
しかし、手をもっと強く握り貴女は数歩だけ上へ進み私をふり返る。

フィオーレ

優しく甘く私の名が響く。
貴女は手を引っ張ることもせず微笑む。
名だけを甘く呼ぶ。
フィオーレと。

神々しさに止まっていた足は軽くなっていた。
麗しき世界へ・・・。
二人して光の彼方に逃れよう。
今一度、足を踏み出せば麗しき世界からまばゆい光が放たれた。






まばゆい光を抜けたと思った先は暗い夜の世界。
パステル色の世界は鈍色に変わり、
温かい光の道は月明かりに照らされた白いシーツになり、
天空の扉はがあったそこには薄汚れた天井がひろがっていた。

なんということ
なんと悲しき目覚め

パステルの世界は私の幸福の夢。
甘く私を呼ぶ貴女は熱き私の思いが燃え上がった幻影。

なんということ
あぁ夜、あの夢を返しておくれ
あぁ、あの人の幻影を返しておくれ

今一度、あの人を見せておくれ
うつつで見れぬあの人を今一度夢で見せておくれ



天に仰ぎ、両手を伸ばしてもなんの一つも変わらず、私の青い瞳から滴だけがこぼれていく。
空のてっぺんに月が昇りきったころ、哀れな男の家からは嗚咽だけが漏れていた。








短編あっぷ。
このお話はフォーレ作曲「夢のあとに」という歌を元につくりました。
声楽で歌われているこの曲。
内容は未練たらしい哀れな男が夢の中で別れた恋人を見るという内容で、曲自体も嘆くような旋律があり、哀れさがよく出ています。
綺羅自信けっこう気に入っている曲です。
機会があったら聞いてみてください。
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   吐き出したいのは愛情

 夢見がちに生きてて
 リアルとファンタジーの狭間に住む女ですよ

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