白薔薇と黒薔薇の箱庭
気ままに更新。 気が向いたら自作の物を更新。 北の国の学生さんが送る日常日記。
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魔物な話
この世のものとは思えない綺麗な声で
船乗りを海に引きずり込む魔物
その名は
セイレン
「~♪~♪」
僕が眠りから覚めたときに彼女の歌声が聞こえた。
「~♪」
美しい声で流れるように聞こえる言葉一つ一つでさえも
可愛く感じてしまう。
「~♪・・・あっ、洋平!おはよう。」
僕が起きたことに気づいて、歌を止め話しかけてきた。
「おはよう蓮。」
「ふふ・・・それにしても洋平が学校で寝てるなんて、珍しいね。」
「僕の海の精が夢の海へ連れて行ったんだよ。」
「洋平っておもしろいことをいうよね。」
「そう?」
「うん!」
そしてまた彼女は歌い出した。
君は気づいてないのかい?
君の歌声が僕を「蓮」という名の海の虜にさせている。
・・・いや、むしろ僕は溺れているのかもしれない。
君は僕のセイレン。
その美しい歌声で船を海へ迷いこませる。
「・・・僕も重症だね・・・。」
「ん?何か言った?」
「ううん。」
「気のせい・・・かな?」
君は歌い出す。
船を沈めて自分のものにするために
「~♪~♪」
君はセイレン
船を海に引きずり込む魔物
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嘘に優しいとかありだと思うかい?
知ってたよ
君の優しい嘘
だから言わせて
空の果てから日が昇る。
暁の空が好きだという貴方に近づきたくて始めた早起きは、
いつしか日課になって、こうしてここに私を立たせる理由となった。
「冬馬。」
私の口からこぼれ落ちたその名は
今はもう、どこにいるかわからない人の名
大好きで大切で、私に必要な人の名
貴方にあった最後の日
いつになく貴方は無口だった。
貴方の目がどこか遠くを見つめていることも見ていてわかった。
なにかある
言わずともわかってしまう隠せない真実。
守られるだけは嫌だからと
共に立ち向かいたいと
その想いを秘め、貴方に真実を問うた。
その答えは「否」
貴方は私にささやかでとても残酷なものを残した。
残酷だけど貴方の温かさが伝わるそれは貴方のつくった優しい嘘。
「冬馬、何があるの。」
それは遠回しに問うた言い方。
「冬馬は誰で、何をしようとしているの。」
頭のいい冬馬なら、そう私は聞いたとかんじているはず。
冬馬は遠くに向けていた目を私にまで照準を合わせた。
照準があった冬馬の目は温かく光っていた。
「明日は会社の重要な会議なんだ。」
素直に聞けば納得する。
でも違う。そう言うことではない。
冬馬も、もう気づいているはず、私が冬馬の秘密に気づいていることを。
だが、あえて今まで通りの嘘をついた冬馬。
それは「真実」を私に告げる気はないと言う冬馬の意志。
冬馬なりの優しさ。
「そう、・・頑張って。」
「ああ、もちろん。」
貴方がアパレル会社の社員ではないことはわかっている。
貴方がなにか大きな影を背負っているのもわかってた。
「普通の恋人たち」を求めればそれらもすべて見なかったことに、
気づかなかったことにすれば、よかったのかもしれない。
でも、貴方とその真実を分け合いたかった、貴方とその大きな影を共に背負って生きたかった。
だから、「真実」を教えて欲しかった。
だから、この質問に賭けた。
貴方は何も教えてくれずに優しい嘘だけを伝えた。
本当に貴方は相変わらず女心のわからない人だ。
私の精一杯の笑顔を見た後、貴方は静かに私の目の前から去った。
ガチャンと重たい扉の閉まる音と共に涙があふれた。
知っている わかっている
だけど私は
貴方を止めることなど叶わない。
「真実」を告げられなかった私は
「何も知らない私」を演じてなければいけない。
そして「何も知らない私」は知らないからこそ、止める権利も何も持っていない。
貴方はヒドイ人。
小さなことではいっぱい衝突してこようとするのに
大きなことは一人で解決しようとする。
貴方はヒドイ人。
何も明かさずに消えようとする。
そしてそれを止めることすら私にさせてくれない。
貴方はヒドイ人。
でも、止める権利のない私はなんとなく心の底でわかっている。
きっと、私が止めても貴方は辛いだけでしかないのだろうことを。
日が昇り
ゆっくりと動き始めた今日
また多くの人々が動き出す
いつもと変わらない始まり
だけど
今日という日の私の隣に貴方はいない
それだけ、・・・・ただ、それだけ
グッバイ マイレディ
俺は欲しかったんだ
君という幸せが
真っ赤に汚れた俺の手を美しいと言った君
簡単に人を殺す鉄の塊をカッコイイと言った君
闇夜に染まった俺の瞳を好きと言った君
世界が明るくなったんだ
君という太陽に光の希望を教えてもらった
夜に浮かぶ太陽はやがて
闇に葬られた
信じたくなかった
わかりたくなかった
君がいないなんて
嘘だと言ってくれ
冗談だと言ってくれ
俺の叫びだけがよく響いた
太陽は夜に存在しなかった
それでも夜は太陽を望んだ
俺は朱に体を染めて
君のところへ行こうと思った
いや 君のところには行けないかもしれない
だから君が
俺と堕ちてくれませんか
君という幸せが
真っ赤に汚れた俺の手を美しいと言った君
簡単に人を殺す鉄の塊をカッコイイと言った君
闇夜に染まった俺の瞳を好きと言った君
世界が明るくなったんだ
君という太陽に光の希望を教えてもらった
夜に浮かぶ太陽はやがて
闇に葬られた
信じたくなかった
わかりたくなかった
君がいないなんて
嘘だと言ってくれ
冗談だと言ってくれ
俺の叫びだけがよく響いた
太陽は夜に存在しなかった
それでも夜は太陽を望んだ
俺は朱に体を染めて
君のところへ行こうと思った
いや 君のところには行けないかもしれない
だから君が
俺と堕ちてくれませんか
精神的なそれ
いつからだろう
貴方のことを思うようになったのは
ストックホルム症候群
籠に入れられた蝶も
首輪をつけられた黒猫も
出してと叫ぶ
離せと叫ぶ
だけど私は叫ぶことができなくなった
私も捕らえられた一人だというのに
窓の前に置かれた椅子から木の枠に切り取られた世界を見る。
濃い霧に包まれていた世界はやがて暁の空に変わるだろう。
この部屋は何一つ不自由しない部屋。
でも、ドアは開かない。
私は優遇された籠の中の鳥。
最初はあの人が嫌いだった。
私を閉じこめた張本人であるあの人が
なによりも憎くて疎ましかった。
交わす言葉は質問への返事だけだった。
だけどある時
見てしまった
気づいてしまった
あの人が愛しげに私を見つめていることを
あの人が憂いに満ちていることを
あの人が哀に瞳を揺らしていることを
知ってしまった
わかってしまった
いつからだと聞かれれば
気づいてしまったあの時から
私の心は傾いていたのだろう
交わされる言葉が質問への返事から
会話へと変わっていった。
見るのも嫌だったあの人の姿を
焼き付きそうになるぐらい見るようになった。
聞くのすら拒絶していた声を
全神経を使ってでも聞くようになった。
いつからだと聞かれれば
あの人を待つようになったころから
私の心に外界を遮断する鉄格子がついたのだろう
未だ暁の空に変わらない世界を見続ける私の耳に
あの人の足音が聞こえてくる。
扉のカギをはずす音が聞こえるころには
私の鼓動はいつもの倍以上に鳴っている。
ギシッと古くさいこの椅子にあの人の手がかけられた。
「外に行きたいですか?」
私の耳のすぐ横で淋しげに空気をふるわせた音。
あぁ、なんてことだろう。
あの人が微かに震えているのがわかる。
またあの人は憂いに満ちた瞳をしているのだろうか。
ふりむけばわかるだろけどそんな勇気もないから
思うことを口にするだけ。
「外には行きたくありません。」
揺れることなく否定すればあの人はいつもの声に戻った。
「あれほど出たがっていたのに?」
確かめるような口調。
でも、今の私はそれすらも愛おしい。
「今、外に出ればきっと私はここに戻ることができないような気がする。」
「それは貴女が今まで求めていたことでしょう?」
あの人が言うように私はここから出ることを望んでいた。
自由を求めた。
でも今は自由を失うことより
あの人との世界を失うことの方が怖い。
「この世界を壊したくない。私は貴方の側にいたいんです。」
「いいのですね?貴女はたった今逃げるチャンスを失いましたよ?」
「逃げる?ここが私の居場所。ここが私の生きる世界。逃げるところなどありません。」
「そうですか。ならばこのような質問はもういりませんね。」
「ええ。これからはもっと別な話をしたいです。」
暁の空に変わり始めた世界を捨てた私に
あの人は安心したように
嬉しそうに
口の端を綺麗にあげて
見惚れるような笑みをした。
その笑みに私も
微笑み返した。
いつからだと聞かれれば
初めて出会ったときに
あの人の微笑みに見惚れたときから
私はこうなることを知っていたのかもしれない
籠の中の蝶はやがて
主人のためだけに
あざやかな羽を美しくはためかせ
舞うようになった
首輪をつけられた黒猫はやがて
主人のためだけに
どこかが溶けていくんじゃないかと思うほど
いと甘き声で鳴くようになった
出してと叫ぶことも
離せと叫ぶことも
なくなった
かわりに
捕まえていてと囁く
どこにも行かないでと囁く
今ではもっと早くにあの人からの愛に気づけば
よかったと思うほど
あの人に捕まえられている。
いつからだと聞かれれば
この気持ちを認めたあの時から
私はストックホルム症候群患者。
私は愛の病の重病患者。
貴方のことを思うようになったのは
ストックホルム症候群
籠に入れられた蝶も
首輪をつけられた黒猫も
出してと叫ぶ
離せと叫ぶ
だけど私は叫ぶことができなくなった
私も捕らえられた一人だというのに
窓の前に置かれた椅子から木の枠に切り取られた世界を見る。
濃い霧に包まれていた世界はやがて暁の空に変わるだろう。
この部屋は何一つ不自由しない部屋。
でも、ドアは開かない。
私は優遇された籠の中の鳥。
最初はあの人が嫌いだった。
私を閉じこめた張本人であるあの人が
なによりも憎くて疎ましかった。
交わす言葉は質問への返事だけだった。
だけどある時
見てしまった
気づいてしまった
あの人が愛しげに私を見つめていることを
あの人が憂いに満ちていることを
あの人が哀に瞳を揺らしていることを
知ってしまった
わかってしまった
いつからだと聞かれれば
気づいてしまったあの時から
私の心は傾いていたのだろう
交わされる言葉が質問への返事から
会話へと変わっていった。
見るのも嫌だったあの人の姿を
焼き付きそうになるぐらい見るようになった。
聞くのすら拒絶していた声を
全神経を使ってでも聞くようになった。
いつからだと聞かれれば
あの人を待つようになったころから
私の心に外界を遮断する鉄格子がついたのだろう
未だ暁の空に変わらない世界を見続ける私の耳に
あの人の足音が聞こえてくる。
扉のカギをはずす音が聞こえるころには
私の鼓動はいつもの倍以上に鳴っている。
ギシッと古くさいこの椅子にあの人の手がかけられた。
「外に行きたいですか?」
私の耳のすぐ横で淋しげに空気をふるわせた音。
あぁ、なんてことだろう。
あの人が微かに震えているのがわかる。
またあの人は憂いに満ちた瞳をしているのだろうか。
ふりむけばわかるだろけどそんな勇気もないから
思うことを口にするだけ。
「外には行きたくありません。」
揺れることなく否定すればあの人はいつもの声に戻った。
「あれほど出たがっていたのに?」
確かめるような口調。
でも、今の私はそれすらも愛おしい。
「今、外に出ればきっと私はここに戻ることができないような気がする。」
「それは貴女が今まで求めていたことでしょう?」
あの人が言うように私はここから出ることを望んでいた。
自由を求めた。
でも今は自由を失うことより
あの人との世界を失うことの方が怖い。
「この世界を壊したくない。私は貴方の側にいたいんです。」
「いいのですね?貴女はたった今逃げるチャンスを失いましたよ?」
「逃げる?ここが私の居場所。ここが私の生きる世界。逃げるところなどありません。」
「そうですか。ならばこのような質問はもういりませんね。」
「ええ。これからはもっと別な話をしたいです。」
暁の空に変わり始めた世界を捨てた私に
あの人は安心したように
嬉しそうに
口の端を綺麗にあげて
見惚れるような笑みをした。
その笑みに私も
微笑み返した。
いつからだと聞かれれば
初めて出会ったときに
あの人の微笑みに見惚れたときから
私はこうなることを知っていたのかもしれない
籠の中の蝶はやがて
主人のためだけに
あざやかな羽を美しくはためかせ
舞うようになった
首輪をつけられた黒猫はやがて
主人のためだけに
どこかが溶けていくんじゃないかと思うほど
いと甘き声で鳴くようになった
出してと叫ぶことも
離せと叫ぶことも
なくなった
かわりに
捕まえていてと囁く
どこにも行かないでと囁く
今ではもっと早くにあの人からの愛に気づけば
よかったと思うほど
あの人に捕まえられている。
いつからだと聞かれれば
この気持ちを認めたあの時から
私はストックホルム症候群患者。
私は愛の病の重病患者。
必然?それとも運命ってやつなのかな 前編
「死にたいのか?」
そう
あれが初めての会話
「・・。」
もう嫌だ。
ガシャンと屋上のフェンスに手をかけてのぼる。
大嫌いだ。
この世界も人も
皆
消えればいい
フェンスの向こうに降り立った。
下はなにもなく、遠くに地面が見えるだけ
ここから落ちれば
死ねる
「死にたいのか?」
ピクリと動いた足が止まる。
後ろ・・・いや、違う。
前だ。
顔を上げると 反対側の建物に少年がいた。
「そうだよ。」
「何でだ?」
「嫌だから。この世界が嫌いだから。」
コノ世界ハ
アマリニモ残酷スギル
少年は
笑った
「俺とおいでよ。」
私はさしだされた手を無視して
飛び降りた
ダレモ シンジナイ・・・
キミモ ウラギルノダロウ?
少年は
笑って
「 」
そう 言った
そう
あれが初めての会話
「・・。」
もう嫌だ。
ガシャンと屋上のフェンスに手をかけてのぼる。
大嫌いだ。
この世界も人も
皆
消えればいい
フェンスの向こうに降り立った。
下はなにもなく、遠くに地面が見えるだけ
ここから落ちれば
死ねる
「死にたいのか?」
ピクリと動いた足が止まる。
後ろ・・・いや、違う。
前だ。
顔を上げると 反対側の建物に少年がいた。
「そうだよ。」
「何でだ?」
「嫌だから。この世界が嫌いだから。」
コノ世界ハ
アマリニモ残酷スギル
少年は
笑った
「俺とおいでよ。」
私はさしだされた手を無視して
飛び降りた
ダレモ シンジナイ・・・
キミモ ウラギルノダロウ?
少年は
笑って
「 」
そう 言った
後半へ続く
恋してないのに恋の話
「正人のばかやろ~。」
そんなことを叫びながら歩くあたしは
さぞかし滑稽な姿だっただろう
大好きだった彼に水をぶっかけてきたのはついさっき
今は学校の屋上でだらだらしてる
人に水をかけるなんて初体験だ
でもそんなの気にしない
悪いのは彼だから
たまたま買い物に行った
それで知らない女の子と連れ添って歩く彼を見つけた
幻でも見たのかと思った
でも、それは幻なんかじゃなくて間違いなく彼だった
二人がカフェに入ったからついて行った
そのカフェは初めてのデートで彼が連れてきてくれたカフェだった
楽しそうに向かい合って座る二人に近づいた
「楽しそうだね~、正人。」
声をかけたらびっくりして彼はこっちを見た
なによ、その幽霊でも見たような顔は
「み、瑞季。どどどどうして、ここここここに?」
「なに?来ちゃいけないわけ?」
「そそそんなことないけど、」
予想外の出来事に焦っている正人はおいといて
女の子のほうに向き直った
「正人は貴女にあげる。あたしはもういらないわ。」
「え?」
「だから、いらないわ。あたし浮気する男って嫌いなの」
あたしの言葉が意外だったのか女の子はびっくりしてる
「正人、あたしたちはもう終わりね。」
「ま、待てよ瑞季!・・・・うわっ!!」
うるさく吼えるからコップに入っていた水をかけてやった
「しつこいよ正人。」
コップを正人の足下に投げつけてやる
「あ、そうだ。新しい彼女と仲良くね。」
ヒールの音を響かせてカフェから立ち去った
それから学校に向かった
幼なじみのあいつになぐさめてもらおうと思ったの
「啓助~なぐさめて~。」
「瑞季、お前買い物に行ってたんじゃねぇのかよ。」
「聞いてよ~。」
「俺の発言は無視かよ。」
「浮気されてた~。」
「あ~、たしか正太郎だっけ。いや、正彦だったか?」
「正人だよ。」
「あー、そうだ正人だ。」
「うわーん。」
うずくまるあたしの頭をぽんぽんと軽くたたいてくれた
「水かけてきた。」
「まじかよ。」
「ついでにコップも投げてきた。」
「そりゃ、こえーな。」
「本気だったよ。」
「・・・。」
「本気だったのに。」
「そんな男のことなんか忘れちまえよ。」
「そんなにすぐ忘れられるわけないじゃない。」と言おうとしたら
抱きしめられてた
「俺にしとけよ。」
真剣な声が誰もいない学校に響いていた
(胸がどきどきして、爆発しそうだよ啓助)
そんなことを叫びながら歩くあたしは
さぞかし滑稽な姿だっただろう
大好きだった彼に水をぶっかけてきたのはついさっき
今は学校の屋上でだらだらしてる
人に水をかけるなんて初体験だ
でもそんなの気にしない
悪いのは彼だから
たまたま買い物に行った
それで知らない女の子と連れ添って歩く彼を見つけた
幻でも見たのかと思った
でも、それは幻なんかじゃなくて間違いなく彼だった
二人がカフェに入ったからついて行った
そのカフェは初めてのデートで彼が連れてきてくれたカフェだった
楽しそうに向かい合って座る二人に近づいた
「楽しそうだね~、正人。」
声をかけたらびっくりして彼はこっちを見た
なによ、その幽霊でも見たような顔は
「み、瑞季。どどどどうして、ここここここに?」
「なに?来ちゃいけないわけ?」
「そそそんなことないけど、」
予想外の出来事に焦っている正人はおいといて
女の子のほうに向き直った
「正人は貴女にあげる。あたしはもういらないわ。」
「え?」
「だから、いらないわ。あたし浮気する男って嫌いなの」
あたしの言葉が意外だったのか女の子はびっくりしてる
「正人、あたしたちはもう終わりね。」
「ま、待てよ瑞季!・・・・うわっ!!」
うるさく吼えるからコップに入っていた水をかけてやった
「しつこいよ正人。」
コップを正人の足下に投げつけてやる
「あ、そうだ。新しい彼女と仲良くね。」
ヒールの音を響かせてカフェから立ち去った
それから学校に向かった
幼なじみのあいつになぐさめてもらおうと思ったの
「啓助~なぐさめて~。」
「瑞季、お前買い物に行ってたんじゃねぇのかよ。」
「聞いてよ~。」
「俺の発言は無視かよ。」
「浮気されてた~。」
「あ~、たしか正太郎だっけ。いや、正彦だったか?」
「正人だよ。」
「あー、そうだ正人だ。」
「うわーん。」
うずくまるあたしの頭をぽんぽんと軽くたたいてくれた
「水かけてきた。」
「まじかよ。」
「ついでにコップも投げてきた。」
「そりゃ、こえーな。」
「本気だったよ。」
「・・・。」
「本気だったのに。」
「そんな男のことなんか忘れちまえよ。」
「そんなにすぐ忘れられるわけないじゃない。」と言おうとしたら
抱きしめられてた
「俺にしとけよ。」
真剣な声が誰もいない学校に響いていた
命
短
し
恋
せ
よ
乙
女
短
し
恋
せ
よ
乙
女
(胸がどきどきして、爆発しそうだよ啓助)
どこかの二人の話
君を見ていると
なんだか遠く感じる
君は大手の跡取り息子
私はしがない名家の娘
幼い時には気にならなかった
だけど今は、君と一緒にいることは
よくないと思う自分がいる
ピピピピピピピ
鳴り響くケータイ
ディスプレイを見なくてもなんとなくわかる
「もしもし。」
『あ、美雪?やっとつながった。』
ほら、やっぱり彼だった
私の身分違いの片思い相手
「どうしたの。硝太。」
『最近美雪がさ、こっちに来てくれないじゃん。』
当たり前でしょ そうなるようにさけてるんだから
「硝太の邪魔しちゃいけないし。」
硝太に会ってたら、いつまでたってもあきらめられないよ
『邪魔じゃねーよ。俺、暇人だもん。』
嘘だ いつも会社の上層部の人に囲まれて忙しいじゃない
「嘘。」
『ホント。』
「忙しいじゃない。」
『美雪のための時間ならいつでも作れる。』
「何その告白みたいなセリフ。」
本気にしちゃうからやめてよ
期待しちゃうじゃない
『告白だよ。』
「・・・・・熱でも出たの?」
『本当なんだけど。』
「いい年して、からかってるの?」
冗談でも言わないで
笑い飛ばせないから
『美雪。』
「そんな変な冗談言ってないでいいお嬢さん見つけたら?」
『美雪。』
「だいたい、いっつも私をからかって楽しいの?」
『美雪。』
「硝太はさぁ『美雪!!』
『俺は、本気だから。』
風の音が聞こえる
長い沈黙
「・・本当?」
『ホントだ。』
「いまさら冗談だなんて言ったら殺すよ?」
『冗談でもこんな事は言わないよ。』
「私なんかでいいの?」
『俺は美雪がいいの。』
電話ごしの告白で始まったつきあいは
やがて私たちを結婚に導いた
今になってからあの時は
身分の違いの気づいて距離を置いていたんだと彼に言えば
彼は「そんなことを気にしてたのか。」と笑った
この二人に壁なんかない
(身分だなんて言葉は私たちの辞書にはない)
なんだか遠く感じる
君は大手の跡取り息子
私はしがない名家の娘
幼い時には気にならなかった
だけど今は、君と一緒にいることは
よくないと思う自分がいる
ピピピピピピピ
鳴り響くケータイ
ディスプレイを見なくてもなんとなくわかる
「もしもし。」
『あ、美雪?やっとつながった。』
ほら、やっぱり彼だった
私の身分違いの片思い相手
「どうしたの。硝太。」
『最近美雪がさ、こっちに来てくれないじゃん。』
当たり前でしょ そうなるようにさけてるんだから
「硝太の邪魔しちゃいけないし。」
硝太に会ってたら、いつまでたってもあきらめられないよ
『邪魔じゃねーよ。俺、暇人だもん。』
嘘だ いつも会社の上層部の人に囲まれて忙しいじゃない
「嘘。」
『ホント。』
「忙しいじゃない。」
『美雪のための時間ならいつでも作れる。』
「何その告白みたいなセリフ。」
本気にしちゃうからやめてよ
期待しちゃうじゃない
『告白だよ。』
「・・・・・熱でも出たの?」
『本当なんだけど。』
「いい年して、からかってるの?」
冗談でも言わないで
笑い飛ばせないから
『美雪。』
「そんな変な冗談言ってないでいいお嬢さん見つけたら?」
『美雪。』
「だいたい、いっつも私をからかって楽しいの?」
『美雪。』
「硝太はさぁ『美雪!!』
『俺は、本気だから。』
風の音が聞こえる
長い沈黙
「・・本当?」
『ホントだ。』
「いまさら冗談だなんて言ったら殺すよ?」
『冗談でもこんな事は言わないよ。』
「私なんかでいいの?」
『俺は美雪がいいの。』
電話ごしの告白で始まったつきあいは
やがて私たちを結婚に導いた
今になってからあの時は
身分の違いの気づいて距離を置いていたんだと彼に言えば
彼は「そんなことを気にしてたのか。」と笑った
この二人に壁なんかない
(身分だなんて言葉は私たちの辞書にはない)
硫酸プールにすべてを溶かす
骨も肉も血さえも
すべて無になる
愛も哀も
すべて無になる
子どものころによく読んだ童話に
「人魚姫」という話がある
人間の王子様に恋をした人魚姫が
美しい声と引き替えに足をもらって
王子に会いに行ったけど
声がないから何も話せずに
海に飛び込んで泡になったお話
私は人魚姫はきっと硫酸のプールに
飛び込んだのだと思った
ぜんぶ溶かして ぜんぶ無くして
自分を消して無かったことにしたのだと
そう、思った
骨も肉も血さえも
すべて無になる
町の奥深くの森にひとつの深い池がある
毎夜、毎夜誰かがそこに行き、
二度と戻ってこない池
硫酸だけでできた池
嘆き悲しむ人魚たちへの池
今もまた一人の人魚が飛び込もうとしている
親に見捨てられ、友に罵られ、恋人に裏切られた
世界に嫌われた私
生きることが辛い
だからすべて無かったことにしよう
私が生きていたことも、私という存在も
さぁ、行きましょう
私は人魚姫 泡になって消える女
また一人、嘆き悲しむ人魚が消えた
骨も肉も血さえも
すべて無になる
愛も友も情も存在も
すべて無になる
硫酸プールに私を溶かす
(現実逃避だと言われてもかまわない。これが最初で最後の意思表示)
すべて無になる
愛も哀も
すべて無になる
子どものころによく読んだ童話に
「人魚姫」という話がある
人間の王子様に恋をした人魚姫が
美しい声と引き替えに足をもらって
王子に会いに行ったけど
声がないから何も話せずに
海に飛び込んで泡になったお話
私は人魚姫はきっと硫酸のプールに
飛び込んだのだと思った
ぜんぶ溶かして ぜんぶ無くして
自分を消して無かったことにしたのだと
そう、思った
骨も肉も血さえも
すべて無になる
町の奥深くの森にひとつの深い池がある
毎夜、毎夜誰かがそこに行き、
二度と戻ってこない池
硫酸だけでできた池
嘆き悲しむ人魚たちへの池
今もまた一人の人魚が飛び込もうとしている
親に見捨てられ、友に罵られ、恋人に裏切られた
世界に嫌われた私
生きることが辛い
だからすべて無かったことにしよう
私が生きていたことも、私という存在も
さぁ、行きましょう
私は人魚姫 泡になって消える女
また一人、嘆き悲しむ人魚が消えた
骨も肉も血さえも
すべて無になる
愛も友も情も存在も
すべて無になる
硫酸プールに私を溶かす
(現実逃避だと言われてもかまわない。これが最初で最後の意思表示)
そんな目で見てもダメなんだよ
大きな瞳に俺だけを映してほしかった
赤い唇が紡ぐ音は俺への愛だけがよかった
白くて綺麗な手が触れるのは俺だけがよかった
「亜紀。」
「・・・。」
欲しい物は何でも手に入れてきた。
「亜紀。」
「・・・。」
欲しかったから連れてきた。
欲しかったから閉じこめた。
「亜紀。」
「・・・。」
「アイシテル」を言って欲しくて連れてきた
誰にも見られたくないから閉じこめた
欲しい物は何でも手に入れてきた
でも君は手に入らない
そっと、亜紀の肌に触れた
「亜紀、冷たいね。」
欲しかったから連れてきた
欲しかったから閉じこめた
でも君は手に入らない
だから誰かの物になる前に殺した
この男、純粋すぎる鬼
(俺は動かない亜紀が欲しかったわけじゃない)
赤い唇が紡ぐ音は俺への愛だけがよかった
白くて綺麗な手が触れるのは俺だけがよかった
「亜紀。」
「・・・。」
欲しい物は何でも手に入れてきた。
「亜紀。」
「・・・。」
欲しかったから連れてきた。
欲しかったから閉じこめた。
「亜紀。」
「・・・。」
「アイシテル」を言って欲しくて連れてきた
誰にも見られたくないから閉じこめた
欲しい物は何でも手に入れてきた
でも君は手に入らない
そっと、亜紀の肌に触れた
「亜紀、冷たいね。」
欲しかったから連れてきた
欲しかったから閉じこめた
でも君は手に入らない
だから誰かの物になる前に殺した
この男、純粋すぎる鬼
(俺は動かない亜紀が欲しかったわけじゃない)
待っているから
「待っています」
だから かならず
帰ってきてください
彼岸花が揺れている
赤い赤いしるべ
いずこの人を照らす灯
ひらりひらりと空中を舞った赤い紙。
それは招待状。
戦場からの黄泉の切符。
「そんな、どうして‥‥!」
悲鳴のような嘆きのような声が口から漏れる。
ただただ「なぜだ」と「どうして」と
「静代、どうしましたか?」
なかなか戻ってこない己の妻を心配して夫が出できた。
「あぁ、信也さん。これが‥『赤紙』が。」
「とうとう私にも来たのですね。徴兵令が。」
静代の手の中にあるのは『赤紙』
国が徴兵を行う際に、徴兵される男がいる家へと送られる手紙。
つまり、『赤紙』という名の『死刑宣告』。
時は第二次世界大戦。
多くの国が戦っている中、日本軍は最初こそ威勢がよかったもののその勢いは次第に衰えていき、今は防戦一方であった。
同盟軍が諸国に負けるのも時間の問題だった。
「静代、泣かないでください。」
「ですが信也さん。死ぬかもしれないのですよ。」
まだ結婚して1年もたっていないと言うのに、夫は戦場に行く。
もしかしたら死ぬかもしれない。
そうしたら、私は、独りになる。
「一人は嫌です。置いていかないでください。」
「それはいけません。貴女はここにいてください。」
「ですが‥!!」
有無を言わさぬ声音に顔を上げれば穏やかに笑う信也の顔があった。
なにも反論できなくなる微笑み。
菩薩のような温かい微笑みがあった。
「待っていてください。必ず戻ります。だからここにいてください。」
「信也さん、 わかりました。待ってます。ずっとここで待ってます。」
二人が約束をした数日後、信也は軍のほうへと旅立った。
戦争は敗戦の色をより濃くしていった。
日本軍は日々苦しくなっていく状況に最後の手段を投じた。
そして組織されたのが「神風特攻隊」だった。
神風特攻隊の隊員は片道の分しかガソリンの入っていない戦闘機に乗り込み、敵の戦闘機に体当たりし敵を巻き込み自爆していった。
そしてその一人に信也もなることとなった。
その知らせは静代の元にも届き、静代は三日三晩泣きはらした。
「よく聞け!これより貴様等はこの戦闘機に乗り、敵国軍を巻き添えにして死にゆけ!!お国のために一人でも多くの敵兵を巻き添えにしてこい!!」
「はっ!!」
次々と同僚たちが戦闘機に乗り込んでゆく。
今、同じ釜の飯を食った仲間が死ににゆく。
そして私も死ににゆく。
静代は怒っているでしょうか。怒っているでしょうね。
独りにしないと言ったのに、私は約束を破ってしまいましたからね。
信也は戦闘機のシートに滑り込み、扉を閉めた。
この世界の空気を感じられるのも後少し。
めい一杯空気を吸う。
エンジンをかけてハンドルを握る。
動き出し始めた戦闘機。素早く移り変わる景色。
眼前に迫る敵の飛行部隊。
静代の元には戻れないでしょうが、私がここでひとつでも巻き添えにできたら貴女の命が助かるというのであれば私は喜んで死にましょう。
「ごめんなさい、静代。」
空中でひとつ戦闘機が近くにいた戦闘機を巻き込んで爆発した。
さくさくと赤い花の上を歩く女性がいた。そして岸辺にしゃがみ込んで近くにあった石の前に花を置いた。
「信也さん。もうあれから10年立ちました。」
簡単な石造りの墓の下に彼の骨は埋まっていない。
空で爆発した彼の遺骨は海だけが居場所を知っているだろう。
彼が「戦死した」と手紙をうけて五日後、日本は敗戦した。
「日本は負けました。戦争ももう終わりました。皆が前を向いて一日一日を生きています。。」
兵がそれぞれの町に引き上げた時、静代は駅へ行った。
もちろん信也はいなかった。
あちらこちらで再会を喜ぶ声が響く中で静代は声を押し殺して泣いた。信也はいないとみとめなきゃいけなかったから。
「信也さん、置いていくなんてヒドイですよ。
独りにしないでって言ったじゃないですか。」
ぼろぼろとこぼれる涙それをサァァッと風がさらった、その時懐かしい声が耳に届いた。
『静代、時間がかかりましたが帰ってきましたよ。
これからはずっと側にいます。』
振り向いても誰もいなかった。
これは彼岸花がみせた幻覚かもしれないだけど温度は信也の暖かさだった。
「おかえりなさい、信也さん。」
赤い赤いしるべ
いずこの人を照らす灯
彼岸花が
揺れている
ここが道だと
知らせるために
彼岸花が
揺れている
早く帰ってこいと
思い人の声をのせ
赤い赤いしるべ
回帰の道を照らす灯
彼岸花が
揺れている
彼岸花が
揺れている
さぁ、はやく
逢おう
だから かならず
帰ってきてください
彼岸花が揺れている
赤い赤いしるべ
いずこの人を照らす灯
ひらりひらりと空中を舞った赤い紙。
それは招待状。
戦場からの黄泉の切符。
「そんな、どうして‥‥!」
悲鳴のような嘆きのような声が口から漏れる。
ただただ「なぜだ」と「どうして」と
「静代、どうしましたか?」
なかなか戻ってこない己の妻を心配して夫が出できた。
「あぁ、信也さん。これが‥『赤紙』が。」
「とうとう私にも来たのですね。徴兵令が。」
静代の手の中にあるのは『赤紙』
国が徴兵を行う際に、徴兵される男がいる家へと送られる手紙。
つまり、『赤紙』という名の『死刑宣告』。
時は第二次世界大戦。
多くの国が戦っている中、日本軍は最初こそ威勢がよかったもののその勢いは次第に衰えていき、今は防戦一方であった。
同盟軍が諸国に負けるのも時間の問題だった。
「静代、泣かないでください。」
「ですが信也さん。死ぬかもしれないのですよ。」
まだ結婚して1年もたっていないと言うのに、夫は戦場に行く。
もしかしたら死ぬかもしれない。
そうしたら、私は、独りになる。
「一人は嫌です。置いていかないでください。」
「それはいけません。貴女はここにいてください。」
「ですが‥!!」
有無を言わさぬ声音に顔を上げれば穏やかに笑う信也の顔があった。
なにも反論できなくなる微笑み。
菩薩のような温かい微笑みがあった。
「待っていてください。必ず戻ります。だからここにいてください。」
「信也さん、 わかりました。待ってます。ずっとここで待ってます。」
二人が約束をした数日後、信也は軍のほうへと旅立った。
戦争は敗戦の色をより濃くしていった。
日本軍は日々苦しくなっていく状況に最後の手段を投じた。
そして組織されたのが「神風特攻隊」だった。
神風特攻隊の隊員は片道の分しかガソリンの入っていない戦闘機に乗り込み、敵の戦闘機に体当たりし敵を巻き込み自爆していった。
そしてその一人に信也もなることとなった。
その知らせは静代の元にも届き、静代は三日三晩泣きはらした。
「よく聞け!これより貴様等はこの戦闘機に乗り、敵国軍を巻き添えにして死にゆけ!!お国のために一人でも多くの敵兵を巻き添えにしてこい!!」
「はっ!!」
次々と同僚たちが戦闘機に乗り込んでゆく。
今、同じ釜の飯を食った仲間が死ににゆく。
そして私も死ににゆく。
静代は怒っているでしょうか。怒っているでしょうね。
独りにしないと言ったのに、私は約束を破ってしまいましたからね。
信也は戦闘機のシートに滑り込み、扉を閉めた。
この世界の空気を感じられるのも後少し。
めい一杯空気を吸う。
エンジンをかけてハンドルを握る。
動き出し始めた戦闘機。素早く移り変わる景色。
眼前に迫る敵の飛行部隊。
静代の元には戻れないでしょうが、私がここでひとつでも巻き添えにできたら貴女の命が助かるというのであれば私は喜んで死にましょう。
「ごめんなさい、静代。」
空中でひとつ戦闘機が近くにいた戦闘機を巻き込んで爆発した。
さくさくと赤い花の上を歩く女性がいた。そして岸辺にしゃがみ込んで近くにあった石の前に花を置いた。
「信也さん。もうあれから10年立ちました。」
簡単な石造りの墓の下に彼の骨は埋まっていない。
空で爆発した彼の遺骨は海だけが居場所を知っているだろう。
彼が「戦死した」と手紙をうけて五日後、日本は敗戦した。
「日本は負けました。戦争ももう終わりました。皆が前を向いて一日一日を生きています。。」
兵がそれぞれの町に引き上げた時、静代は駅へ行った。
もちろん信也はいなかった。
あちらこちらで再会を喜ぶ声が響く中で静代は声を押し殺して泣いた。信也はいないとみとめなきゃいけなかったから。
「信也さん、置いていくなんてヒドイですよ。
独りにしないでって言ったじゃないですか。」
ぼろぼろとこぼれる涙それをサァァッと風がさらった、その時懐かしい声が耳に届いた。
『静代、時間がかかりましたが帰ってきましたよ。
これからはずっと側にいます。』
振り向いても誰もいなかった。
これは彼岸花がみせた幻覚かもしれないだけど温度は信也の暖かさだった。
「おかえりなさい、信也さん。」
赤い赤いしるべ
いずこの人を照らす灯
彼岸花が
揺れている
ここが道だと
知らせるために
彼岸花が
揺れている
早く帰ってこいと
思い人の声をのせ
赤い赤いしるべ
回帰の道を照らす灯
彼岸花が
揺れている
彼岸花が
揺れている
さぁ、はやく
逢おう