白薔薇と黒薔薇の箱庭
気ままに更新。 気が向いたら自作の物を更新。 北の国の学生さんが送る日常日記。
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精神的なそれ
いつからだろう
貴方のことを思うようになったのは
ストックホルム症候群
籠に入れられた蝶も
首輪をつけられた黒猫も
出してと叫ぶ
離せと叫ぶ
だけど私は叫ぶことができなくなった
私も捕らえられた一人だというのに
窓の前に置かれた椅子から木の枠に切り取られた世界を見る。
濃い霧に包まれていた世界はやがて暁の空に変わるだろう。
この部屋は何一つ不自由しない部屋。
でも、ドアは開かない。
私は優遇された籠の中の鳥。
最初はあの人が嫌いだった。
私を閉じこめた張本人であるあの人が
なによりも憎くて疎ましかった。
交わす言葉は質問への返事だけだった。
だけどある時
見てしまった
気づいてしまった
あの人が愛しげに私を見つめていることを
あの人が憂いに満ちていることを
あの人が哀に瞳を揺らしていることを
知ってしまった
わかってしまった
いつからだと聞かれれば
気づいてしまったあの時から
私の心は傾いていたのだろう
交わされる言葉が質問への返事から
会話へと変わっていった。
見るのも嫌だったあの人の姿を
焼き付きそうになるぐらい見るようになった。
聞くのすら拒絶していた声を
全神経を使ってでも聞くようになった。
いつからだと聞かれれば
あの人を待つようになったころから
私の心に外界を遮断する鉄格子がついたのだろう
未だ暁の空に変わらない世界を見続ける私の耳に
あの人の足音が聞こえてくる。
扉のカギをはずす音が聞こえるころには
私の鼓動はいつもの倍以上に鳴っている。
ギシッと古くさいこの椅子にあの人の手がかけられた。
「外に行きたいですか?」
私の耳のすぐ横で淋しげに空気をふるわせた音。
あぁ、なんてことだろう。
あの人が微かに震えているのがわかる。
またあの人は憂いに満ちた瞳をしているのだろうか。
ふりむけばわかるだろけどそんな勇気もないから
思うことを口にするだけ。
「外には行きたくありません。」
揺れることなく否定すればあの人はいつもの声に戻った。
「あれほど出たがっていたのに?」
確かめるような口調。
でも、今の私はそれすらも愛おしい。
「今、外に出ればきっと私はここに戻ることができないような気がする。」
「それは貴女が今まで求めていたことでしょう?」
あの人が言うように私はここから出ることを望んでいた。
自由を求めた。
でも今は自由を失うことより
あの人との世界を失うことの方が怖い。
「この世界を壊したくない。私は貴方の側にいたいんです。」
「いいのですね?貴女はたった今逃げるチャンスを失いましたよ?」
「逃げる?ここが私の居場所。ここが私の生きる世界。逃げるところなどありません。」
「そうですか。ならばこのような質問はもういりませんね。」
「ええ。これからはもっと別な話をしたいです。」
暁の空に変わり始めた世界を捨てた私に
あの人は安心したように
嬉しそうに
口の端を綺麗にあげて
見惚れるような笑みをした。
その笑みに私も
微笑み返した。
いつからだと聞かれれば
初めて出会ったときに
あの人の微笑みに見惚れたときから
私はこうなることを知っていたのかもしれない
籠の中の蝶はやがて
主人のためだけに
あざやかな羽を美しくはためかせ
舞うようになった
首輪をつけられた黒猫はやがて
主人のためだけに
どこかが溶けていくんじゃないかと思うほど
いと甘き声で鳴くようになった
出してと叫ぶことも
離せと叫ぶことも
なくなった
かわりに
捕まえていてと囁く
どこにも行かないでと囁く
今ではもっと早くにあの人からの愛に気づけば
よかったと思うほど
あの人に捕まえられている。
いつからだと聞かれれば
この気持ちを認めたあの時から
私はストックホルム症候群患者。
私は愛の病の重病患者。
貴方のことを思うようになったのは
ストックホルム症候群
籠に入れられた蝶も
首輪をつけられた黒猫も
出してと叫ぶ
離せと叫ぶ
だけど私は叫ぶことができなくなった
私も捕らえられた一人だというのに
窓の前に置かれた椅子から木の枠に切り取られた世界を見る。
濃い霧に包まれていた世界はやがて暁の空に変わるだろう。
この部屋は何一つ不自由しない部屋。
でも、ドアは開かない。
私は優遇された籠の中の鳥。
最初はあの人が嫌いだった。
私を閉じこめた張本人であるあの人が
なによりも憎くて疎ましかった。
交わす言葉は質問への返事だけだった。
だけどある時
見てしまった
気づいてしまった
あの人が愛しげに私を見つめていることを
あの人が憂いに満ちていることを
あの人が哀に瞳を揺らしていることを
知ってしまった
わかってしまった
いつからだと聞かれれば
気づいてしまったあの時から
私の心は傾いていたのだろう
交わされる言葉が質問への返事から
会話へと変わっていった。
見るのも嫌だったあの人の姿を
焼き付きそうになるぐらい見るようになった。
聞くのすら拒絶していた声を
全神経を使ってでも聞くようになった。
いつからだと聞かれれば
あの人を待つようになったころから
私の心に外界を遮断する鉄格子がついたのだろう
未だ暁の空に変わらない世界を見続ける私の耳に
あの人の足音が聞こえてくる。
扉のカギをはずす音が聞こえるころには
私の鼓動はいつもの倍以上に鳴っている。
ギシッと古くさいこの椅子にあの人の手がかけられた。
「外に行きたいですか?」
私の耳のすぐ横で淋しげに空気をふるわせた音。
あぁ、なんてことだろう。
あの人が微かに震えているのがわかる。
またあの人は憂いに満ちた瞳をしているのだろうか。
ふりむけばわかるだろけどそんな勇気もないから
思うことを口にするだけ。
「外には行きたくありません。」
揺れることなく否定すればあの人はいつもの声に戻った。
「あれほど出たがっていたのに?」
確かめるような口調。
でも、今の私はそれすらも愛おしい。
「今、外に出ればきっと私はここに戻ることができないような気がする。」
「それは貴女が今まで求めていたことでしょう?」
あの人が言うように私はここから出ることを望んでいた。
自由を求めた。
でも今は自由を失うことより
あの人との世界を失うことの方が怖い。
「この世界を壊したくない。私は貴方の側にいたいんです。」
「いいのですね?貴女はたった今逃げるチャンスを失いましたよ?」
「逃げる?ここが私の居場所。ここが私の生きる世界。逃げるところなどありません。」
「そうですか。ならばこのような質問はもういりませんね。」
「ええ。これからはもっと別な話をしたいです。」
暁の空に変わり始めた世界を捨てた私に
あの人は安心したように
嬉しそうに
口の端を綺麗にあげて
見惚れるような笑みをした。
その笑みに私も
微笑み返した。
いつからだと聞かれれば
初めて出会ったときに
あの人の微笑みに見惚れたときから
私はこうなることを知っていたのかもしれない
籠の中の蝶はやがて
主人のためだけに
あざやかな羽を美しくはためかせ
舞うようになった
首輪をつけられた黒猫はやがて
主人のためだけに
どこかが溶けていくんじゃないかと思うほど
いと甘き声で鳴くようになった
出してと叫ぶことも
離せと叫ぶことも
なくなった
かわりに
捕まえていてと囁く
どこにも行かないでと囁く
今ではもっと早くにあの人からの愛に気づけば
よかったと思うほど
あの人に捕まえられている。
いつからだと聞かれれば
この気持ちを認めたあの時から
私はストックホルム症候群患者。
私は愛の病の重病患者。
久しぶりな大物短編小説。
前に書いたやつを修正した奴だからあんまりじかんはかからなかった。
ストックホルム症候群~犯人と被害者が長時間共にいることで、被害者が犯人にたいして憎しみや怒りなどの感情以外の特別な感情を持つこと。
実在する例としては人質が犯人にたいして協力的になったり、恋愛感情を持つようになったりするようです。
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